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コーヒーの達人への道  バックナンバー 2025年10月

2025年10月下旬号 No.550

“ 秋の気配、レモンコーヒーの物語 ”

前回「涼しくなってきました」とお伝えしたのですが、なんのその。10月中旬になっても、こちらでは昨日の気温が30度を超し、まだまだ半袖が手放せません。

とはいえ、さわやかな秋晴れの日もあり、各地ではスポーツイベントが盛んに行われています。 プロ野球のクライマックスシリーズも佳境を迎え、ファンにとっては目が離せない季節ですね。 大盛況のうちに幕を閉じた大阪万博では、「おいしいコーヒーマップ」を片手に場内を巡った方もいらっしゃったのではないでしょうか。

10月1日は「国際コーヒーの日」。1日には全国各地でさまざまなコーヒーに関する催しが開かれました。 そんな中、10月6日放送のNHK Eテレ「グレーテルのかまど」では、彫刻家であり詩人でもある高村光太郎の「レモンコーヒー」が紹介されていました。

若き日の光太郎がパリに留学していた時の話。オペラを鑑賞後、夜の12時近くに町を歩いていた時に、3人の女性が歩くシルエットに芸術の感性を感じ、その後を追うように喫茶店に入り「レモンコーヒー」を注文します。

その一口を含んだ瞬間、周囲の声がはっきりと聞こえ、部屋の照明が明るくなり、店内の美しさに感動し、自身が急に熱くなったかと思うほど顔が火照ってきた。 オーケストラの音の響きが聞こえて来て、足踏みするほどの高揚を感じた−――そんな体験を記しています。

詳しくは著書「珈琲店より」に記されていますが、高村光太郎を感動させたレモンコーヒーとは、どんなコーヒーだったのでしょうか。 実は意外にも、コーヒーにレモンの輪切りを浮かべただけの、シンプルなコーヒーだったようです。

これなら簡単に出来ますね!成美堂出版の「珈琲の事典」には、いくつかのスタイルが紹介されています。

■カフェ・ナポリターノ
苦味の強い深煎りコーヒーに厚切りレモンを浮かべ、ブラックで飲む。朝に飲むことから、別名「夜明けのコーヒー」とも呼ばれています。

■カフェ・ド・シトロン
浅炒りのコーヒーに、度数の高いアルコールを2〜3滴たらし、薄くスライスしたレモンを浮かべるというもの。

このどちらのコーヒーを光太郎が飲んだのかは分かりませんが、「レモンコーヒー」を通して、彼は強い覚醒と感動を得たようです。 のちに詩集「智恵子抄」でも、智恵子が病の床に伏していた時にレモンを渡す情景について詩を残していて、光太郎とレモンの関係は深いものだったことがうかがえます。当時、レモンは貴重なものだったのではないでしょうか。

今では国産のレモンが各地で栽培され、スーパーにも手軽に手に入るようになりました。 無農薬の新鮮なレモンが手に入ったら、ご家庭でもレモンコーヒーを試してみてください。深煎りも浅煎りもそれぞれ魅力があります。

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2025年10月上旬号 No.549

“ コーヒーの4thウェーブが来る? ”

さすがにお彼岸に入ってから一気に気温が下がり、過ごしやすくなりました。 昔から「暑さ寒さも彼岸まで」とは言いますが、本当に涼しくなりました。人も動物も植物も、猛暑から解放されてほっとしていることでしょう。

さて、10月1日は「国際コーヒーの日」です。しかし、昨今のコーヒー価格の値上りには驚かされます。 8月の消費者物価指数によると、コーヒーの価格は前年同月比で47.6%上昇。コーヒー豆の価格は5年前と比べて約2.5倍にもなっています。

ニューヨークの先物市場で取引されているコーヒー生豆の価格は、2020年と比べて3~4倍に高騰。 消費量が世界的に増える一方、供給は横ばい、加えて気候変動による不作や円安の影響もあり、今後しばらくは日本でコーヒーが安くなる見込みはほとんどないと言われています。

現在、喫茶店のコーヒーは1杯500円程度ですが、これ以上高くなると「気軽にコーヒー1杯」とはいかなくなるかも知れません。 秋の夜長においしいコーヒーを飲みながらくつろぐことが難しくなるのでしょうか。

とは言え、自宅で淹れたコーヒーはお店より安価で、何よりご自身の気持ちも一緒に抽出されているからこそ、格別なおいしさを感じることができます。 もちろん、そのためには良い豆を選ぶことが大前提ですが。

近年、コーヒー文化の発祥地の一つポートランドでは「サードウェーブ」を超えて「フォースウェーブ」と呼ばれる新しい潮流が注目されています。 これは、移民の子世代が自身のルーツに基づき、独自のコーヒー文化を発信する動きです。

特に人気なのが「ポートランド・カ・フェ」。日本でも一時期流行したベトナムコーヒーをベースにしていますが、従来のようにロブスタ種とコンデンスミルクを合わせるのではなく、生産者から直接買い付けた中部高地産のロブスタ種とアラビカ種のスペシャルグレードを使用。 焙煎から抽出まで一人で手掛け、本場ベトナムの豊かな風味を伝えています。

もちろん、日本で親しまれているコンデンスミルク入りの濃厚なベトナムコーヒーも健在で、スイーツのような味わいが楽しめます。 他にもオリジナルブレンドやアレンジコーヒーなどが人気を集めています。

涼しくなり、ますますコーヒーの美味しさが際立つ季節です。ホットでもアイスでも、焙煎したての香り高いコーヒーをぜひお楽しみください。
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